「かもめ食堂」や「めがね」の映画が好き。
新作「プール」は意に反して・・・。

癒し系映画に慣れてきてしまったのだろうか。
このプールに関しては、上記2作品のように
「自分のしたいことをする」という単純で難しいことを
模索しながら自分の道を見出していくという人たちと
違うような気がした。

4年前に祖母と娘の「さよ」をおいて、タイのチェンマイ郊外にある
ゲストハウスで働き始めた母の京子。
昔から、やりたい事があると、さっさと家を空けてしまう母親だったらしい。
大学の卒業旅行で、母親のもとを訪れた娘は、
タイ人の男の子ビーを引き取って一緒に暮らし、
また自分がいなくてもたのしそうに家族的に暮らす様子を
目の当たりにして、挨拶もそこそこ、自分のゲストハウスに引きこもってしまった。

いつも置いていかれる自分と母親の距離は
プールを挟んで、こちら側と向こう側にいるようで、
一向に縮まらない。
ビーに対する京子の接し方は、まさに親子のようで、
そんな姿を見るのがいたたまれず、つい反抗的な態度をとってしまう。

ある日母親に自分の気持ちをぶつけてみた。

なんで私を置いて行ったのか。

好きな事をしたかったから。今そうするのが一番だと思ったから。
したいようにするのがいい。何処にいても、誰と居ても。

散々やりあったあと「それでも一緒にいたかった」という娘に
「そうか。そうだったんだ」と答える母親。
その後は何事もなく。

自分のやりたいことに、娘を巻き込むことはできない。
娘も自分の人生を歩んでいるから。
何処にいても、離れていても、愛があれば大丈夫。
こうやって他人とくらしていても、家族になれるのだから。
でも、そうか、そうだったんだ。
一緒でもよかったんだ。こんな私の生き方でも
一緒に生きたい、母親の人生に自分の人生を重ねてもいいって
思ったんだ。

っていう「そうか、そうだったんだ」なのか・・・良くわからん。
この言葉で、自分の中の分かりかけていた感情が殺されたような
気分になった。

母親も、娘を置き去りにしたわけじゃなく、
ちゃんと、いつも娘の事を思っていたのだ。
いつもビーに娘の事を話し、ビーもさよを
家族のように思っていた。
そして、また別れる娘に、徹夜してまで
手作りのストールを自分の分身として託す。
それが分かっていても、いまいち感情移入が出来ない。
なんでだろう。

人物背景をあえて説明しない映画において、
感情をぶつける相手に「そうか。そうだったんだ」って
さらっと言われて、何事もなかったようにされても
感情移入するには難しい。

「理由なんて、愛ひとつで十分だ」
愛ひとつで十分かもしれないが、愛の名のもとに
何をやってもいいというわけではない。
ひねくれ者は、そう思ってしまうのだ。

DVDを3度も見返したが、未熟さゆえ
とらえどころのない映画になってしまった。

ラストカットの朝靄の道路を歩く僧侶達の姿は
美しいと思った。

『いつか気付きたい』

プール

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チェンマイ国際空港に降り立った女子大生さよ。
目的は、4年前に自分と祖母を残して家を出た母・京子に会うこと。
母と一緒に働く青年・市尾の出迎えを受け、
小さなプールのあるゲストハウスに辿り着くさよ。
そこで思いがけず楽しげな母の姿を目にしたさよは
、母に対するわだかまりを一掃募らせてしまうのだが…。

プール オリジナルサウンドアルバム

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なかなかどうして、このアルバムが結構いいのよね。
和むし、暑い夏にも涼しげなのね。