去年ミニシアターで公開された映画でしたが、
行く暇がなく、やっとDVDで観ることができました。

年金暮らしで、細々と生活していたが、
家賃を払い切れずに、借金のかたに夫婦の思い出の
ダイヤモンドのイヤリングを差し出す妻。
不甲斐なさに立ち上がった夫が向かった先は、
町の郵便局だった。

愛車のクラシックカーに乗り、拳銃を持ち
「私もこんな事は初めてなんだが・・・」と
紳士的に銀行強盗をする。
すんなり強盗は成功してしまう。

長年連れ添った夫婦間の間に流れる感情。
ともすれば、ただ一緒に生活しているだけだったのに、
強盗と逃避行という事件をきっかけに、
人生を謳歌し始める。

盗んだお金ではあるが、イヤリングを取り戻し、
妻にドレスを買ってあげる。
高級ホテルに泊まり、スパを楽しみ、
女性従業員から勧められた、マッサージをうれしそうに受ける
旦那にやきもちをやく妻。

人生を楽しむことを思い出していくのである。
生活に疲れた妻が、段々綺麗になっていく。
頼りない旦那だとおもっていたのが、
若いころに助けてくれたヒーローだったことを思い出す。

むろん警察も追ってくるのだが、いつも肝心なところで
取り逃がしてしまう。
その逃れ方が「そんなバカな」という、強硬突破だったり、
おとり作戦だったり。


世間を巻きこんでの逃避行。
段々、皆がこの老夫婦を応援し始め、同じ年金暮らしの老人達が
「年金が少ない」とデモを起こし始めたりする。

だたやみくもに強盗を働いているわけではなく、
目的があってルートを決めていた。
その先に待ち受けていた、結末。

最後は「えっ・・・」と思い、思わず涙。
そんなはずはない。だってあれだけ逃げお失せてきたのに。
死を持って償うのか・・・。

若いころに妻を助けたエピソードが流れる。
そして思い出のダイヤモンドのイヤリング。
二人が恋に落ちた瞬間が流れる。

だから余計に最後の結末に涙を誘う。
しかし、信じられないのだ。
今までの警察からの逃亡方法を見ていると。

で・・・本当にラスト。
ニヤリとして終わった。

老夫婦がとにかくかわいい。
「脳みそを吹っ飛ばすぞって下品だったかな?」と
拳銃で脅すやりかたを心配した爺ちゃん。
「銀行の真ん中に仁王立ちして拳銃を構えてた、あなたはカッコいい」
と言い放つ婆ちゃん。

買い物をして、洋服の試着をした婆ちゃんに
「神に誓って誰よりも美しい」と褒める爺ちゃんに
うれしさを隠せない婆ちゃんが
「むやみに神を持ちださないで、信じていないくせに」といって
二人で笑う場面など、本当に可愛らしい。

期待度満点の映画だったが、
期待を裏切られず、もう一度見てもいいかなって思うものでした。

『天晴れ』


人生に乾杯!
人生に乾杯!

年金暮らしの老夫婦が、無情にも困窮に追い込まれた末、
ついには国家に反旗を翻して紳士的な強盗を重ねていく
奇妙な逃避行の行方を描くハンガリー発のハートウォーミング・クライム・コメディ。
ヨーロッパの小国ハンガリー。
かつて運命的な恋に落ちたエミルとヘディも、
いまや81歳と70歳の老夫婦。時代も変わり、
年金だけでは家賃の支払いも事欠く日々。
そんなある日、ヘディの大切なイヤリングまで借金のカタに取られる事態に。
見かねたエミルは年代物の愛車チャイカに乗り込むとひとり郵便局へと出向き、
ついに強盗を決行。最初は当惑気味のヘディもやがて夫と合流、
ふたりは手を取り合って逃避行へと繰り出すが…。