去年、父親の直腸癌を期に、
家のトイレはウォシュレットになった訳だが・・・。

やはり冬場に便座が温かいというのは、大変ありがたく
「ひぃっ・・・」と飛び上がることもなくなったわけだが、
さすがに寒さも増してくると、便座の温度設定が高になっていても
人肌とは言えず「ぬるい・・・」と思うわけです。

家は借家なので、もしこの家を引っ越せば、
原状回復で、トイレの便座も元に戻さなければいけません。
ちなみに、便座は他所のものですが、便座のフタは家のものです。
という事を知ったのも、ほんの2,3ヶ月前の話なのですが。

で、昨晩の話です。
便座の「ぬるい・・・」をきっかけに、
そういえば便座はちゃんと保管してあるのかしらん?と思って母に聞くと
「ちゃんと取ってあるよ」と答えました。
家のどこかに、便座とフタが一緒に保管されている姿を思うと
笑いがこみ上げてきますが。

「便座はともかく、フタは家で買ったからね・・・取っておくよね。
ところで、便座のフタはどこで買ったの?」という下らない質問から
話が大きくなりました。
「あぁ、フタを売りに来た人がいたの」
「えっ、訪問販売で便座のフタを売りに来たの?」
「そうそう、だからいまだに便座のフタが無い家もあるよ」

家はこのアパート(鉄筋)が出来たときからの入居者で、
その当時から、そして今でも便座のフタは個人負担だそうで。

「どっから、そんな便座のフタが無い家屋だって聞いて来たのか・・・。
ところで、家はどうして便座のフタを買おうと思ったわけ?」と
便座のフタが、ほぼ上がったっきりだったような気がしたので
その便座のフタの価値を聞いてみた。

すると思ってもみない答えが返ってきた。

「あぁ、穴が開いていて嫌だったのよ」
「穴?って水洗だよ・・・」思わぬ穴発言で笑いました。
「だって、穴が開いているし、お前だったか、お兄ちゃんだったかが
水遊びし始めて、こりゃマズイって思って」
「水遊びって、上の水、下の水、どっちよ!!」と驚くと
「どっちだっけかなぁー。とにかく、落ちたら危ないと思ってフタを買ったのよ」

水洗トイレで水遊び。

今の家に引っ越して来たときは、私はまだバブバブのはずだったので、
水遊びをしたのは・・・兄だ。

最初に暮らしていた、世田谷のアパートのトイレは
水洗だったのかと聞くと、
「ぼっとんトイレだった、2階にトイレがあったから、
穴が1階にあって、お兄ちゃんが落ちたら助け出せないので、
絶対に1人でトイレに行っちゃ駄目だって言ってたのよ」
いやいや、大人でさえ怖いですよ。

たまに一緒にトイレに行くと、下から上がってくる風で臭い、
「くちゃい・・・」と兄が顔をそむけるのが可愛かっただの、
黙っていても、オマルにまたがる兄が可愛かっただのと、話が続いた。

「その頃のことが、つい、一昨日だったような感じなのにねぇー」
すみません、無駄すぎるほど大きくなりまして。

便座のフタの質問から、まさかこんなに大きく、しかも家族のルーツを
聞かされるなんて思ってもみなかった。
そして、初めて見た水洗トイレで、水遊びをしたのが
私じゃなくて本当によかったよ・・・。

『あなたよ、あなた』