9月17日 6日目 室生寺編

本日は足を伸ばして、室生寺と長谷寺に行く事にした。
何故この寺に行きたかったのか、よく覚えていない。
何故か室生寺という響きに誘われたようで、
なんとなく決まりました。

電車を乗り継いで、室生口大野駅で下車した。
下車した乗客は、私と友人の2人だけ。
バスに乗って15分で室生寺のはずだったが、
バスの本数が約1時間半に1本だった。
タクシーが1台だけとまっていて、なんとか室生寺までの足を見つけた。

クネクネした山道を登りながら、
「次のバスは13時10分だけど、それは無理だから、
その後の14時40分に乗って帰ってきな」と運転手。

ひっそりとした佇まいの門前町に下ろされて、
他の観光客もあまり見当たらない。

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橋を渡って、室生寺に入ると、すぐに金堂が見えてきた。

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煌びやかさがない、土臭い感じがするいい佇まいだった。
石段を登り近づくと、お堂の中に居た人が「説明しましょうか?」と
言ってくれたのでお願いをした。
この金堂は、平安時代に建てられ、江戸時代に建て増しをしたそうだ。
なので軒下に軒があるような、1つ奥から仏像を見なければならなく
梁が邪魔になり、よく見ることができなかった。
それでも、中に収められている仏像群は迫力があり、
それぞれの光背に絵が描かれていた。
暗がりでありながら、その光背の絵の迫力は十分伝わってきた。
配置の仕方もまた特別な感じでよかった。
しばし見とれていたが、なにせ距離がある。
もう一歩前で見たい衝動に駆られたが、諦めよう。
後日HPで見ると、その仏像群が見られえ、モヤモヤは解消。
しかし、もう一度間近で見たいものです。

金堂を出ると、あれは本堂になるのだろうか。
修復中につき、覆い布で概観がよくわからなかった。
中は参拝できたので、入ってみたが、よくわからず。

その横の石段上には、五重塔が立っていた。
「あぁ、この風景はよく写真でみるけど、ここだったのか」

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石段下から、既に絵になる風景にシャッターを押し続けた。
石段を登ってからも、これでもかという数のシャッターを押し、
何故か撮ることを止められない。
五重塔がここまで美しいものだとは思わなかった。

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飽きるまでシャッターを押したと言っていいくらい。
その奥にある奥の院への山道を見て、
御影堂までは行かなくてもいいかと思った。
ならば、その奥に見える欄干まで行こうと歩き出しました。

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橋の前で写真を撮り、橋を渡ろうとは思いませんでした。
しかし、ここまで来たのだから、その先をちょっと覗いてから帰ろうと、
橋を渡った時、その凄まじい光景に爆笑しました。
「ちょっと、早く、早くこれを見て」友人を手招きして2人で更に爆笑。
圧倒的な段数の石段が永遠頂上まで続いて見えるのです。
急いでパンフレットを見ると「胸突きの石段」と書いてあるではありませんか。
胸突きというネーミングにやられてしまい・・・。

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俄然「登れるところは、登っておけ」の信条が沸いてきて、
「登らずにはいられない。ここで帰ったら後悔する」と
突然登り始めてしまいました。

「この、この石段の良さが、画像に表現できない」と写真を、撮り登りを繰り返し・・・
しまいには 「ひぃー、ひぃー」としか言えなくなり、
休んだら登れないので、無理にでも登り、とりあえず休める場所もなく
笑いながら「絶対、バカだ。バカなんだ」と言いながらも登りました。

この凄まじさを現地で是非見てもらいたい。
画像でみると、どうしても短く見えるのです。

終わったと思った階段が更に続いており・・・。

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やっとのことで頂上にたどりつき、息も絶え絶えになりながら周りを見ながら、休憩。
ちょっとメタボな親父様が、受付にデンと座っておられました。
「あの人、毎日これを登っているの?抜け道でもあるのか。」と思うほど。
受付横にある、仏像を見ていると携帯が振るえ始めました。
慌てて見ると、父親からの連絡。
『何かあったのか?』とかけ直すと、父親がすぐに出ました。
「今話しても大丈夫?」と神妙な面持ち。
山の中なのによく電波が届くものだと関心しながら「どうした?」と聞くと
「今日は診察日だから病院に行ってきた。先生が言うんだよ・・・」と言ったので、
また何かあったのかと、ちょっと覚悟した。

すると父親の声が、ぱっと明るくなり
「腫瘍マーカーの値がまた下がって5.6だって。それにレントゲンにもCTにも、
もう影が映ってないって」と嬉しくてしょうがないらしくて、
笑いながら話す父親の声。
普通なら、わざわざかけてこない父親が、よっぽど嬉しかったのか
早く話したくてしょうがないとういう風に報告してきたのだ。

電話口で喜ぶ姿が目に見えて、自分は石段を登ってきた達成感と
天橋立からずっと父親のことを幾度も頼んできた参拝先でのこととが重なり、
涙が出てきてしまった。
「薬師如来様にも、よく頼んできたんだよ。本当に頼んで・・・」
父親が「ありがとうねぇ、あがとうねぇ」っと繰り返し更に涙が。

電話を切った後、なんとか取り繕い、振り返ると
友人がとても心配そうな顔をしており、友人を見たとたんに安心して
また涙腺がゆるみ、涙が溢れてしまった。
「バカでしょ、私、バカでしょ」と恥ずかしくて何回も言った。
事情を説明すると、友人も本当に喜んでくれて
「泣け、泣け」と言ってくれた。

しかしその後、石段を降りるさいに、違った意味で泣き続けた。
「この急斜面、怖いんすけどー。足が痛いんですけど。」

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下山して、近くの食堂でお昼を食べました。
バスが来るまでには時間があるので、バス停のある場所を確認して
近くのかわいらしい喫茶店に入ることにしました。

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作りがとっても小さくて、椅子もテーブルも小さくてよい感じ。
店内に入ると、生絞りレモンスカッシュの文字。
生絞りに弱いです。速攻頼みました。
友人はアイスカフェオレ。コーヒーは井戸水を使って抽出したとのこと。
とっても美味しかったです。
壁には季節別の五重塔の写真が貼ってありました。
反対側には、メチャクチャに破壊された五重塔が。

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その写真を見て思い出しました。数年前にニュースで見た
台風の被害でメチャクチャになった五重塔の姿を。

「あぁ、ここでしたか」
たしか、龍が駆け上ったような傷跡とかっていわれていたような。

しばし休憩をして、バス停に戻ると、
どこから湧いて出てきたというくらい、わらわらと人が集まってきました。
バスに乗り込み、次は長谷寺へと向かいました。