7月24日(月)

お粥が7分粥になった。
北海道にある取引先のお客様からいただいた、
夕張メロンを切ってこっそり差し入れした。

「メロンが食べたければ、このサラダを食べろ」と
父親が嫌いなブロッコリーとカリフラワーを食べさせる。

「夕張メロンはやっぱり旨い」と食べていた。
「頼むから黙って食べてくれ!」とヒヤヒヤしながら見張っていた。

点滴も1日1本となる。

周りの人たちが続々と退院報告を受ける中、
父親だけが取り残されている感じになる。
「俺、いつから入院しているんだっけ?」と聞く。
「慌てなくても大丈夫だよ。しっかり直していこうよ」
そんな話をしているなか、助教授がいらして、
「調子がいいらしいね。食事して腹痛はない?」と聞かれた。
大丈夫と父親が答えると、
「今週末あたり、試験的に1度家に帰って、調子がよければ
退院日を決めることになるかな」
父親共々喜びのご挨拶をした。

夕食後には、必ず散歩するようにした。
ベット脇のカーテン(仕切り)を空ける寸前、
父親が着ていたカーディガンの前ボタンを外した。
「何それ、一応かっこつけてるの?」と聞くと
「ふふん」と鼻で笑った。

いつも上の食堂まで行くが
今日は目先を変えて、入院棟の玄関まで歩いていき、
外に出てみる事にした。
玄関は2階にあるので、1階まで長い階段がある。
数段事に踊り場があるので、休憩しながらで丁度よい。
久しぶりの外の空気に、父親の足どりも軽やかに
トントンと階段を下っていく。
「おぃ、脱走するなよ」と声をかけると、
久しぶりに父親が大きな声で笑った。

普段から、人の目を気にする人なので
パジャマを着たまま外に出るのは嫌がるかと思ったのだが、
下の通りギリギリまで降りていき、しばらく通りを眺めていた。
人がジロジロ見ているにもかかわらず。
よっぽど外が見たかったんだろう。

母親に携帯から連絡を入れる。
父親にかわると、どこから電話しているのかと聞いてきたらしい。
外にいると嬉しそうに答える父親。
母の驚いた声が、携帯から漏れて聞こえてくる。

『その先にもう一歩』