地下鉄のホームで、バックから財布を出した。
『ベチッ』と何かが落ちた音がした。
それはまさに、幸せが落ちた音だった。

下を見ると、金色の丸い物が落ちていた。
拾い上げると『開運』の文字が刻み込まれていた。
ひゃぁー!!財布につけていた開運小槌の根付のフタだった。
その小槌は、歌舞伎鑑賞に行った両親からのお土産で、
小槌のなかには幸運を招くアイテムが、
ざくざくと入っているはずだった。
それが空っぽ・・・
「あぁー私の幸せぶちまけたー」と必死に床に目を凝らし
拾い集めたが、物は5?ほどのものが多く、まるで見つからない。
しかも中に何が何個入っているかも分からない。
とりあえず、電車を2本ほど逃して、一生懸命拾ったが
とうとう見当たらなくなってしまった。
利用客が少ない時間帯だったので、踏み荒らされなくてすんだのが・・・。
母に何にが何個入っているのか聞いたが、知らないと言われた。

赤ん坊は両手に幸せを掴んでいて、産まれてくるときにそれを
離してしまうから、一生懸命またその幸せ掴むために生きるのだという
話を聞いたことがあるが、
まさに、あれがその瞬間だったような・・・。

数日後、雑誌の通販カタログに、
この小槌が写真入で紹介されていた。
偶然というか、嫌味というか。

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サイコロは入ってないと思うが、
あぁ、やっぱり・・・数が足りない。
幸せって、床を這いずり回って探すものなのねぇ。

『幸せは足元に落ちている』