「十分使えますよ」
「じゃまだまだ、働いてくれるんだ」
「えぇ、大切に使ってあげてくださいね」
そんな会話をしたのは三年前。

家の押入れで長いこと眠っていたミシンを
たたき起こして、なれない手つきで
カタカタとやっていたのが、昨日のことのようです。

せっかく始めたのだからと、ミシン屋さんに来てもらい、
オーバーホールをしたミシンが帰ってきたときに、
担当の方と最後に話したのが、上記の事。
『使ってあげて』のあげての言葉に感動したのを覚えている。

このミシンと付き合いだして、ミシンのコツを覚え、
洋裁の楽しさを教えてもらい、完成したときのあの達成感を分かち合った。
いつも、この子のおかげだった。
それがもう、使えなくなりました。

そう思ったら、涙が出てきた。
20年選手のこの子の部品は、もうないそうです。

きっとあの人なら直してくれると思って電話したら、
あの担当者さんは、定年退職されていた。
きっとあの人は、バリバリ働いているときに、
この子を売っていたんだろうな。

カンバック!!担当者さん。
あなたならきっとなんとかしてくれただろうに。

不思議な事に、ほかの機能は、まだ使えそうなので
だましだまし、たまーに使わせてもらおう。

『長年ご苦労様でした』